


マンテラス、リトルママンのお料理でも使用し、ママンの直営店、ネットショップ「ママンズ」でも販売させていただいている「生命あるふれる田んぼのお米・雁音(かりおん)米」。
この美味しいお米が作られるたんぼを自分たちの目で見て、お米づくりに携わっている方々ならではの生の声を伺うため、生産者である小野寺實彦さんを宮城県田尻町にママンスタッフ4名で訪ねてきました。
田尻町は、宮城県の北部、東北新幹線「古川駅」から10kmほどの距離にある穀倉地帯。私たちはまず360度の景色が一望できる加護坊山に案内され、広大な穀倉地帯や栗駒、船形、蔵王の山々、翌朝訪れることになる蕪栗沼(かぶくりぬま)、遠くは太平洋を山頂から望みました。
比較的新しい時代にできたという栗駒山の溶岩は柔らかく、山を伝って田んぼには良質なミネラルを容易にもたらしてくれるといいます。
この地域を流れる3本の河川は昔から頻繁に氾濫を起こし、土地が肥沃になったおかげで、美味しい米づくりが行えるというお話を伺いました。
ちょうど雁が飛来するのと同じという高さの山から望む大きな自然の循環と恵みには、感謝の気持ちが沸き起こります。

蕪栗山からのパノラマ

小野寺さんとママンの柳谷シェフ
栗駒山からの絶景のあといよいよ田んぼを見せていただきました。小野寺さんたちの田んぼには、タニシ、めだか、どじょう、トンボほか多くの生き物が共生しています。
環境ホルモンなど人体への影響が心配される除草剤、殺虫剤、殺菌剤などの農薬や化学肥料を使わず、いきもののHOMEとなるように配慮された田んぼは自然の生態系を取り戻し生命力に満ち溢れています。
「たんぼの生き物を守ることは、カロリーベースのエネルギーだけではなく、生命ベースのエネルギーをお米に持たせるために必要なことです。人間は栄養分を摂っているから長生きできるわけじゃない。自然からもらうエネルギーを取り入れないと。でも、生命力というと計るものさしがない。生き物が切磋琢磨して生きているというのが生命力の証しなのです。」小野寺さんはこう話してくれました。
たんぼにタニシを発見!
ママンの視察メンバー
水質のよい場所でないと生息しないシジミもたくさん発見!

大粒で生命力に満ちた雁音米
小野寺さんたちのお米づくりには、農薬を一切使用しない
ほか、種もみの消毒もしません。生き物との共生という点では、たんぼをほとんど耕さない「不耕起農法」も貢献しています。
不耕起によって、稲は、糸ミミズほかおびただしい動植物と共生させながら育てられ、稲が持つ生命力を最大限に引き出すことができます。
これを「地力」が上がる、というそうです。
たんぼは表面のわずかな部分しか耕さず、稲わら、モミ、苅草などすべて田に戻します。すると稲が雑草と闘い、必死に根を大地に張るため病害虫にも強い稲が育つといいます。
たんぼを耕さないことで、真雁もやってきます。そして真雁がたんぼで捕食したフンは土の中の微生物たちによって分解され、土をますます肥沃にしてくれる。まさに有機的な食物連鎖が成立するのです。

小野寺さんのたんぼに作られたビオトープ

たんぼと生き物との共生を熱く
語るひかるさん

小野寺さんのお宅では猫も犬ものびのび。
柴犬の名前は「ライス」。雁音米のように生命力に
あふれ、ものすごく元気!
小野寺さんが代表を務める雁音農産開発を訪ね、大規模な脱穀機や精米機などを見せていただいた後、和歌山から小野寺家に嫁いできたひかるさんにもお話を伺いました。
大学で農業を学ぶ中で、有機農法をやると環境破壊になると考えていたひかるさんは、この土地に来て本当の有機農法とはなにか一つ一つ検証することを始めたということ、その目的のために取り組んで実を結びはじめた自然との共生活動について語ってくれました。
国の補助整備事業でたんぼを合理化、パイプ化し三面コンクリートを作っていったことで、コウノトリやトキは絶滅したといいます。それは、生き物にとっては家を奪われること。人間が直接的に健康被害を受ける農薬・化学肥料は生き物にとって被害のひとつの側面でしかありません。
基盤整備をした有機圃場(ゆうきほじょう)はたしかに農業の生産性を上げ、他のたんぼからの汚染がないため、一時的には人間にとって都合がいい。しかし、こうした田んぼにはメダカは入って来られない、水は地下のパイプラインを通って出ていくだけなのでメダカは日干しになるだけだといいます。
ひかるさんは、古川農業試験場の先生に教えてもらいながら、めだかやかえる、とんぼをはじめとした生き物調査を始め、たんぼにさまざまな生物のためのビオトープも作り、今では雁音米を生産するこの地域の自然環境を守る運動の中心的存在になっています。
「たんぼは本来生き物のHOME。4~5万羽の真雁が渡来するこの田尻が生き物の生息できる空間、HOMEと思ったとき、生き物の連鎖、地力、この土地の希少性がスパンと心に落ちてきました。この土地がかけがえのない土地だと気づいたのです。その時にこの土地に骨を埋めようと思いました。」
きっぱりと語るひかるさんからはさらにこんなことも語ってくれました。
「私たちのお米を食べている人たちはここ宮城がHOMEと思ってほしい。」
こんな思いで生産しているお米をいただけることに胸が熱くなる言葉でした。
雁音の最大の強みは小野寺家だけでなく、無農薬・無化学肥料栽培だけにこだわるのではなく、自然との共生をかなえる生命力のあるお米づくりに賛同をしてくれる農家が一緒に活動できていることだといいます。
農業をするための大きな機械は農業だけでは購入できず外に働きに行かなければならない、だから農家の子供は農業が嫌いになってしまうといいます。
だからひかるさんは、農業の中で味わえる「喜び」や「使命」を生き物調査を通じて伝えていきたいと話します。
生き物調査をする際には子供たちも必ず連れてきてもらい、おじいちゃんが一生懸命こういうたんぼをやっているからこういう生き物がいるんだね、と伝えているといいます。
「日本人の主食はお米、先祖から技術だけではなく、生命そのものを受け継いでいるんだよ。」と。
こうした活動が農家どうしの連帯感やモチベーションも高め、環境保全に対して「やらされている」という意識から、「自ら積極的に取り組む」という方向転換にもつながってきているといいます。
「一人で守れる自然は両手で抱える程度、みんなでやれば広面積に守っていける。」
「人間が最初に環境破壊を行ったのは農業。自分たちの都合で山を拓いて自然農法というのはおこがましい。だけど人が見て懐かしいと思うのは人の手が入った山。人と自然の営みが調和しているようすに人はやすらぎや美しさを感じる。それが共生型水田。わたしたちは無農薬ということだけじゃなく、共生型水田でのお米づくりを基準にしていきたいと思っています。」
いっせいに飛来する雁の群
広大な平地に昇る朝日

蕪栗沼からたんぼに向かう雁の群れ
翌朝私たちは午前4時に起床して、田尻町の北部に位置する日本最大の雁の飛来地蕪栗沼(かぶくりぬま)に4万6千羽といわれる雁の飛び立ちを見学しに行きました。
まだ太陽も顔を見せない広大な平野の土手で、寒さに震えながら、蕪栗の遊水地からざわめくように聞こえる野鳥の鳴き声に、底知れない自然の畏怖を感じつつ、待つこと1時間半。まさに雁行の形を作りながら飛び立つ雁のグループが少しずつ現れ始めます。
遠くシベリアからの2000キロの距離を渡来する雁は、田尻のたんぼに冬でも生き残っている稲株を目指して飛来し、この湿地で越冬します。その数は日本に飛来する雁の80%といわれます。
雁は滑走もせずに一気に空へと飛び立つ爆発的なパワーを持っています。この地で栽培される玄米がかれらのパワーの源になることを本能的に雁たちにはわかっているのです。
ざわめきのような鳴き声がしだいに高まったかと思うと、一気に空の一部が黒いかたまりのような雁の大群で埋めつくされながら移動していきます。大群の移動は何度か行われ、いままでに経験したことのないような野生の力と臨場感には圧倒されるばかり。
50haの蕪栗沼は、2005年9月1日に国の特別保護区として指定され、同年11月8日から開催された「ラムサール条約※第9回締約会議」においてラムサール条約湿地に登録されました。
※ラムサール条約とは(外務省HPより)
湿原、沼沢地、干潟等の湿地は、多様な生物を育み、特に水鳥の生息地として非常に重要である。しかし、湿地は干拓や埋め立て等の開発の対象になりやすく、その破壊をくい止める必要性が認識されるようになった。湿地には国境をまたぐものもあり、また、水鳥の多くは国境に関係なく渡りをすることから、国際的な取組が求められる。そこで、特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地及びそこに生息・生育する動植物の保全を促し、湿地の適正な利用(Wise Use、一般に「賢明な利用」と呼ばれることもある)を進めることを目的として、1971年2月2日、イランのラムサ-ル(カスピ海沿岸の町)で開催された「湿地及び水鳥の保全のための国際会議」において、本条約が作成された(1975年12月21日発効)。
本条約は、環境の観点から本格的に作成された多国間環境条約の中でも先駆的な存在であり、現在では広く用いられるようになった持続可能な利用(Sustainable Use)という概念を、その採択当初から適正な利用(Wise Use)という原則で取り入れてきた。
取材:2007年11月
「生命あふれるたんぼのお米」はママンテラス大阪店、リトルママン品川店ほかネット通販「ママンズ」(www.mamans.jp)でご購入いただけます。