仕事の合間をぬって85歳の母を連れ、息子を供に秋田の田沢湖高原温泉、乳頭温泉郷に行った。
深く考えず小さなカバンひとつで仙台に寄り、母をせかして仙台駅から新幹線に乗り込む。
母は3か月前に60年以上連れ添った夫に先立たれて以来、まだ魂は夫と共にあるようでその後物忘れが一段と激しくなっていた。
“もうボケていやになっちゃう。生きているのが面倒臭くなっちゃった”と言うのが最近の口癖だから温泉旅行は母の気分転換にもなるかもしれない。
仙台からは1時間半ちょっとで田沢湖駅に到着。私は乗り物に乗るとすぐ寝込んでしまうので目が覚めたら一面雪景色だったのにびっくり。


私は温泉大好きだが血圧が高い母は長湯を好まず折角の温泉なのに“いい気もち”と言いながらもさっさと出てしまう。私は普段はシャワーなので久しぶりの温泉は体が心底温まって有難い。
一人しか入れないつぼの形の露天風呂などにも入り、蛸になった気分も味わう。広いお風呂もいつも独占状態。何しろ半端な時期なので観光客がほとんどいない。
.jpg)
.jpg)
元々私は計画に縛られるのが苦痛なタイプで、つまりは計画性がなく、何事もその時の気分次第なので10時に田沢湖高原ホテルをチェックアウトの後次の日泊まるホテルに3時にチェックインするまでどうしたらいいか考えていなかった。
何しろ季節柄突然の大雪で田沢湖観光でも田沢湖高原の散策でもない。結局昼間の時間を潰すのに決めたのは乳頭温泉郷までタクシーを頼んで有名な鶴の湯温泉へ行くことだった。
重たい雪の降りしきる中、スリップして転落してもおかしくない崖の坂道をベテランの運転手さんはものともせず運転しながらここの歴史を語り続ける。
鶴の湯は1000年も前からあり、佐竹藩のお殿様もお気に入りだったとか。20分位走るとその鶴の湯温泉が見えてきた。早速車から降りて片栗粉を踏むような感じの雪の上を母が滑って骨折しないよう気をつけながら歩いて温泉へ向かう。
普通の温泉も露天風呂も隙間かぜがヒューヒュー入ってくる掘立小屋みたいなところで着替えをするのだがバスタオルも石鹸もストーブもない。これで母がかぜをひいたらやっかいなことになるな、と心配が心をかすめる中気合で服を脱ぐ。
でも露天風呂に思いきって入り、次々天から舞い落ちるまっ白な雪を仰ぎ見ながら温かい温泉に体を沈めた瞬間、この幻想的な世界に身を置く贅沢で不思議な時間に思わず感謝。
大自然のぬくもりに抱かれるとはこういうことだと実感した。ここのお湯が皮膚や内臓疾患など様々な病気に効果的であることは言うまでもない。
お昼には名物、山の芋団子鍋を頂き、チェックインに丁度いい具合の時間にバスでその日宿泊予定のホテルへ無事向かうことができた。
